今月、(英)内務大臣Vernon Coakerがスウェーデンの買春法の視察に訪れる予定となっている。英政府は、買春を犯罪とするスウェーデン・モデルの採用を検討している。この法律では多くの男性が恥ずかしい思いをし、街角に立ち売春する女性の数も減らす効果をもたらしてきたが、トラフィッキング(人身売買)と売春ビジネスを地下経済活動化させる懸念は残っている。自宅に届く白い封筒は、それだけなら全く無害なものだったかもしれない、左肩にあしらわれた紋章さえなければの話だ。その封書の受取人の男性(52歳。妻と2人の子供がいる)は、”Polismyndigheten i Stockholms län”(ストックホルム警察)という文字をみて、売春婦との密会が思ったほど秘密ではないことに気がついたという。
この男性は知らなかったのだが、売春あっせん容疑を捜査する監視中の警官が、彼のボルボが2006年夏にブロンマ郊外のアパートに近づくのを覆面車の中から見張っていたのである。警察はこの男性が午後5時47分に到着し、午後6時10分に出発するところを録画していた。8ヵ月後、警察は彼に対して、買春の容疑が掛けられていることを告げる書面を送った。彼は、自分と「リア」は、おしゃべりをしていただけだと主張し、容疑を否認した。リアは25歳のエストニア人女性で、彼女のサービスはインターネットで見つけたという。しかし買春容疑の5人の男性の1人として起訴された男性は有罪となり、15000クローネ(1200英ポンド)の罰金を課された。
この男性は、スウェーデンで1999年に成立した、買春と買春未遂を犯罪とし売春を犯罪ではなくした法律により起訴された500人以上の男性の1人だ。この法律は、需要を減退することで売春の数を減らし、女性のトラフィッキングを減らすことを目指したものだ。スウェーデンでは、売買春を男性の女性や子供に対する暴力とみなし、これを男女の平等を妨害する搾取の一種と認めている。スウェーデン語では、性を買う男性を「トルスク」と言うが、これは「タラ」という意味だ。
当局によれば、逮捕された男性の多くが、家族もあり、高賃金の仕事についている。
有罪判決を受けた男性のなかには4人の判事もいた。
刑罰としては6ヶ月以下の懲役の選択肢もあるものの、これまですべての男性が罰金刑となっている。罰金額は、各人の収入と以前にも違反の履歴があるかどうかによって決定される。これまでに最も高額の罰金は、年収144万クローネの会社社長に課されたもので、7万クローネ(5600英ポンド)だった。3ヵ月後、彼は再び逮捕された。この反売春法を支持する側も、批判している側も、路上売春が減ったという点では意見は一致している。ストックホルムの社会奉仕プロジェクトで11年にわたって性産業に従事する女性に関わってきたAgneta Borgは、路上売春がかつての55〜60%程度になっていると語る
政府の推計によれば、1998年は2500人のスウェーデン人とスウェーデンの永住権を持つ外国人が性産業で働いていたが、その数は2003年には1500人に減少している。だが、路上以外の場所、つまり売春宿やストリップクラブ、マッサージパーラー、ホテル、バーなどでの売春行為がどれだけあるかはほとんど分からないままであり、オンラインでは増加し続けているという。警察に寄れば、トラフィッキングの被害者が見られるのは、ほとんどがこれらの場所だという。
トラフィッキングでスウェーデンにつれてこられている女性の数は増えており、特に数が多いのは、エストニア、ロシア、ポーランド、およびリトアニアからだ。その数は2003年で400〜600人であった。人身売買の報告責任者も勤めるKajsa Wahlberg警部は、この数は現在1000人になっている可能性もあると語る。
しかし同警部は、トラフィッキング被害者の数は、すべての場所で増加しており、スウェーデンの数値が近隣のスカンジナビア諸国に比べて特別に高いわけではないという。Wahlbergはノルウェーとデンマークでの数字は6000人ほどで、フィンランドでは12000〜15000人であると推定する。この3カ国の人口は、どこもスウェーデンの半数程度である。
買春客側を犯罪者とすることで、トラフィッキングビジネスがやりにくくなると警部は指摘する。「彼らは非常に慎重にやらざるを得なくなる。一度に働かせられるのは2-3人になり、さらに近隣から通報されるために動き回らなければならなくなる」という。警部は、この法律によって売春ビジネスを地下にもぐらせ、性産業に従事する女性達をより危険にさらすことになるという批判を一蹴する。
「売春の大部分は常に屋内や地下で行われてきた。売春に携わっている女性がよりひどい暴力に会っているという通報は受けていない。売春には暴力のリスクがつきものだ。」逮捕される男性のほとんどは、容疑を掛けられた売春宿の監視中につかまっている。というのも、彼らの証拠が斡旋業者やトラフィッカーたちを検挙するのに利用できるからだ。
過去2年間で、警察の活動の結果ストックホルム地域でトラフィッキングの被害女性77人が性的労働から解放された。多くの場合、男性の妻やパートナーが男性自身より先に警察の紋章の入った封筒を開け、事情聴取をしたい、あるいは罰金が課せられたことを知ってしまう。「男性や女性から、我々が彼らの家庭を崩壊させようとしているという電話がかかってくる」とストックホルムの尋問チームのAnn Martinは語る。「妻たちは、恐怖に怯え、苛立ち、腹を立てている。彼女たちはこれは何のことかと訪ねるが、我々は自分の夫と話すようにと答えている」
ストックホルムの伝統的な風俗街であるMalmskillnadgatan通りでは、反売春法によって状況はより厳しくなっているという主張が聞かれる。
Wahlbergは、10年前には40人前後いた性産業で働く女性はいまや少数の集団を残すのみとなってしまったという。ある日の夜には、寒い中たった12人が集まって客引きをしていたが、見たところあまり成果はないようだった。
1人は白髪交じりでサンタ帽を被った中年男性に丁寧に断られた。「あたしのサンタクロースにはなってくれないのね」とその女は言った。90年代の初めにベネズエラからスウェーデンにやってきて住みついたという女性は、掃除婦やウェイトレスとして働いたが、2年前に売春の世界に入った。彼女は31歳だ。「仕事を見つけるのは難しいし、お金が必要なの。今は競争が激しいし、客は怖がっている」
「法律が変わる前にここで働いてた友達は、一晩20000クローネ稼げたといっていた。今ではずっと少ない。誰にでも目標はある。私はスウェーデンで自分の家を持ちたいし、普通の仕事について、教育を受けて、専門的職業がほしい」
別の年上の女は、ライターを探しながら誰もが彼女の仕事が『悲劇的で惨め』なものだと決めてかかっているのにはうんざりだと語った。「どんなことでも同じ。いい日もあるし、ひどい日もある」
マルモ大学のSven-Axel Månssonは、辱める作戦は、たまに手を出す客を遠ざけることはあるが、習慣的な客を遠ざける効果は低いと指摘する。こういった男性は、インターネットのフォーラムを使ってスウェーデンの法律に不平を述べている。国内で買春するリスクを回避するために、コペンハーゲンまで行く男性もいるとMånssonは語る。
Malmskillnadgatanでは、同じ車両が区画の周辺を延々と回ってる。他の男は震える女たちに徒歩で近づき、また遠めに眺めている男たちもいる。パトカーは止まることなく何度か通り過ぎていく。
午前1時半には、ほとんど誰もいなくなった。2人の男が車でやってきて、停車した。1人が下りてきた。目は血走り、口はだらしなく垂れて下の歯が何本か失われている。男はスウェーデン語で喋り、次に英語でこういった「いい娘を探しているんだ」
話しかけた相手が売春婦ではないことに気がつくと、男は悪気はないと主張した。しかしこう続けた「自分の家に女を置いておくなら、俺を満足させてくれるように強い女で泣きゃいけない。俺はセックスが好きだから。仕事で疲れたら満足させてくれないだろう。」
[ガーディアン] 1/5/2008
翻訳協力:片山麻衣子
買春を犯罪とすることが、路上売春を減少することに