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「ネット事件」と「有害サイト」 

長野県小諸市の小学6年女児(12)が10月21日から行方不明になり、25日未明に神奈川県小田原署で保護された。長野県警小諸署は同日午後、未成年者誘拐の疑いで、女児を連れて小田原署に来た東京都町田市の自称無職・青木宏憲容疑者(31)を逮捕した。女児とインターネットのメール友達募集のサイトを通じて知り合った、とされている。

 インターネットを通じて、男が小6の女児と出会い、4日間にわたって連れ回した。男は連れ回したことは認めたが、無理に連れ回したのではなく、同意だと主張している。また、わいせつなどの供述はない。

 男と女児が出会ったのは、いわゆる「出会い系サイト」ではなく、「メル友募集サイト」と呼ばれるものだ。「出会い系サイト」は、法律で定義され、利用が制限されている。

 いわゆる「出会い系サイト規制法」(正式名称「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)における「出会い系サイト」は、異性交際が目的のユーザーに対して、電子メールや掲示板、チャットなどによって、相手方とのコミュニケーションが可能になるサイトを指す。

 禁止行為として、(1)児童(18歳未満の者)を性交の相手方になるように誘因すること、(2)人を児童との性交の相手方になるように誘因すること、(3)対償を供与することを示して、児童の異性交際の相手方になるように誘引すること、(4)対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること――があげられる。

 2人が出会ったサイトは「異性交際」ではなく、「メル友募集」が目的だった。そのため、法的に「出会い系サイト」とは言いがたい。また、報道によると、「児童を性交の相手方になるように誘因」はせず、「対賞を供与することを示した」わけでもない。「出会い系サイト規制法」には抵触しない可能性が大きい。

 スポーツ報知(10月26日)によると、「メル友募集サイト」で、女児と見られる「小6の女のコ」の名前で「小諸に住んでます メール待ってるよ カレシ募集」と記されていたという。女児が募集していたところに男が応じた。

 男は相手が「小6の女のコ」であると分かって、女児に会いに行った。しかし、小6女児の同意はあったにせよ、親の同意なしに連れ回すことの結果について、男は考えなかったのだろうか。自らの行動の結果を読み取ることができなかったということか。

(NPO法人・ユナイテッド・フューチャー・プレス)

渋井哲也【しぶい・てつや】 1969年栃木県生まれ。93年東洋大学法学部卒。「長野日報」社を経て、98年フリーに。2001年東洋大学大学院文学研究科教育学専攻博士前期課程修了。著書に『「田中康夫」研究』(ワニブックス)、『ネット心中』(NHK出版)など、新著は『ウェブ恋愛』(ちくま新書)。

2006年11月6日 OhmyNews http://www.ohmynews.co.jp/news/0/2916



 こうした事件が起きると、サイトを閉鎖したりする動きがある。出会い系サイト関連事件や自殺系サイトにからむ事件が起きれば、サイトにアクセスできなくなったりする。今回2人が出会ったサイトでも、メル友募集コーナーが利用停止となった。

 ネットでの出会いに関する事件は今後も起きるだろう。なぜなら、インターネットには、至るところに出会いがあり、コミュニケーションの相手方と会いたいという欲求が起きる可能性があるからだ。

 単に、インターネットでの出会いを禁止することが、インターネットに対するリテラシーではない。また、子どもはいつも大人の監視下にあるわけでもなく、大人の目の届かないところでコミュニケーションをしている。

 そうしたコミュニケーションの道具について、どのように使うべきか、またネットで知り合った相手方との出会いはどのようにあるべきかをきちんと考えられる「インターネット・リテラシー」の向上を目指すべきだが、ではどのような方策が考えられるのだろうか。

「ネット事件」が起きると、関連サイトがプロバイダなどから削除される。日本の「ネット事件」への対策は、規制やフィルタリングが中心になっている。

 たとえば、1998年のドクターキリコ事件や、同年のペット美容師自殺ほう助事件(発覚は2000年)が発生したとき、「自殺」を話題にする「自殺系サイト」の一部が削除された。

 その一方で、「自傷系サイト」が誕生してきた。リストカットなどを「自殺未遂」ではなく、「自傷行為」として話題にするサイトが増えた。それまで「自傷」で検索すると、自閉症関連の学術サイトが多かったが、若者がカミングアウトするブログも多くなっている。ただ、「自傷」についても、一部のブログや日記サイトは規制を受けているのが現状だ。

 ネットの「有害情報」(有害サイト)を規制する流れはどこから来たのだろうか。98年8月の「青少年とパソコンなどに関する調報告書」(総務庁)や同年10月の「ネットワーク上の少年に有害な環境に関する調査委員会報告書」(警察庁)などを受けて、ネットの有害情報(有害サイト)が規制される方向が打ち出された。

 当初、規制対象の「有害サイト」は「ポルノ画像」が主流だった。96年8月の「第1回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」(ストックホルム会議)で、日本が「児童ポルノの発信国だ」との指摘を受けていたからだ。ただ、「児童ポルノ」の定義は曖昧。中には「児童に見える」成人の被写体も含まれている。実際の調査ではなく、サイト上の調査で「児童に見えるポルノ」が問題にされていた。

 こうした調査方法の是非は問われず、国際世論の流れに沿う形で、日本は99年5月、「児童ポルノ大国」のレッテルを貼られないようにと、「児童買春・児童ポルノ処罰法」(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)を成立させた。これによって、「児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列」することが罪となり、児童ポルノ関連サイトが規制されていく。ただし、規制される「児童ポルノ」には、「絵」は含まれない。漫画などの「絵」は、実際の児童の権利を侵害したことにならないためである。

 一方、「出会い系サイト」が規制対象として検討され始めたのは、01年5月に発足した警察庁の「インターネット上の少年に有害なコンテンツ対策研究会」だった。児童買春事件が「テレクラ」から「出会い系サイト」に舞台を移していた時期でもあった。テレクラ規制が「店舗型出会い系サイト」や「出会い系のケータイサイト」を産み出したといっても過言ではない。

 警察庁の上記研究会報告書は「有害サイト」を以下のように説明する。

 「我が国において、“少年に有害なコンテンツとはなにか”を考える場合、実世界の少年の健全育成を図ることを目的とする青少年保護条例等が判断の参考のひとつとなるものと思われる」

 「インターネット上には、このような有害図書等とパラレルなものの他にも誹謗中傷や『出会い系サイト』といったものが存在しており、少年が安易にアクセスもできるところとなっていることから、これらを含めて設置基準と対策が必要である」

 こうした流れから、「有害サイト」規制は、青少年の健全育成とセットで位置づけられる。現行の青少年保護条例と同じように、「有害情報」の排除、という形になった。

 インターネットは全世界とつながっているのであり、「有害サイト」の排除は現実的ではない。国内サイトを規制できても、海外サイトへの規制は難しい。しかし、そうした状況とは裏腹に、年齢認証やフィルタリングの実施といった施策が中心で、インターネット・リテラシーとは逆の方向へと流れていった。

 (NPO法人・ユナイテッド・フューチャー・プレス)

【しぶい・てつや】 1969年栃木県生まれ。93年東洋大学法学部卒。「長野日報」社を経て、98年フリーに。2001年東洋大学大学院文学研究科教育学専攻博士前期課程修了。著書に『「田中康夫」研究』(ワニブックス)、『ネット心中』(NHK出版)など、新著は『ウェブ恋愛』(ちくま新書)。

2006年11月6日 OhmyNews http://www.ohmynews.co.jp/news/0/2916

2006年11月13日 OhmyNews http://www.ohmynews.co.jp/news/20070410/3090
[ 2007/08/28 09:45 ] 日本 子ども | TB(0) | CM(0)

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